top of page

​自己紹介

  Name: 北沢 宗大 / Munehiro KITAZAWA

  Dept.: 国立環境研究所 生物多様性領域 生物多様性評価・予測研究室 学振研究員​

  E-mail: goldcrestxmunebirds ☆ yahoo.co.jp ☆を@に変えてください 

  ※ 本ページは北沢宗大個人が作成したものであり、所属機関等は内容などについて一切関知しておりません。

​研究内容 / Research Interests 

​ ・農地景観における生物多様性保全  (Biodiversity Conservation in Agricultural Landscapes)  2016年~ 

日本の古い呼称のひとつとして「豊葦原瑞穂国(とよあしはらみずほのくに)​」が知られています。この呼称は、かつて日本にはヨシが繁る湿原がたくさんあったことを示唆しています。また、湿原があった痕跡は地名を紐解くことでも発見できます。例えば、私が幼少期を過ごした新潟には「白根」というまちがあります。これは、かつてまちのどこを掘ってもヨシの白い根がでてきたことに由来するとのことです。過去には国内に大規模に広がっていたであろう湿原ですが、その多くは水田などの農地に転換され、現在ではその名残すら残っていません。明治・大正時代と比較しても、過去100年間で国内の湿地の実に60 %が消失しています。低平地に存在する湿原は土地利用の変化を受けやすく、これまでに最も危機に晒された生態系のひとつであることが世界的にも報告されています。

​現在の北海道苫小牧市に残る一面のヨシ原

このような大規模のヨシ原が残されている場所は殆どない

現在の白根市・燕市周辺のようす

​一面に水田が広がっていて湿原の名残はない

人口減少などの社会情勢の変化を受けて、国内では耕作地の放棄が劇的に進んでいます。過去10年間でおよそ4万 haもの耕作地が放棄され、現在では国内の耕作地面積のおよそ10%を耕作放棄地が占めています。人の手を離れた耕作放棄地は、ヨシやスゲなどの湿原植生に覆われる場合があることが知られています。もしかしたら耕作放棄地が、かつて失われた湿原性生物の生息地として機能するかもしれません。

私は、農地景観に残存する湿原や耕作地と、耕作放棄地に生息している鳥類の種数や個体数を調査しています。これまでに鹿児島県から北海道までのおよそ500地点の農地で調査を実施してきました。そして、耕作放棄地が湿原性生物の生息地としてどの程度機能しているのかについて明らかにしてきました。

 

これまでの研究で、耕作放棄地が有している生息地としての価値は、人為改変の影響を受けていない湿原に匹敵することがわかりました。今後も国内では増加が見込まれる耕作放棄地ですが、湿原性生物の生息地を保全する上で重要な役割を果たすことを期待できるかもしれません。​

​北海道道央地域の耕作放棄地

この耕作放棄地では絶滅危惧種のアカモズの繁殖を確認した。北海道の耕作放棄地にはいくつかの希少鳥類が生息している。

​北海道道東地域の耕作放棄地

タンチョウは国の特別天然記念物に指定されている。

この耕作放棄地はタンチョウのねぐらとして利用されていた。

​ ・生物多様性変化の長期・広域推定 (2021年~)

「人間が環境を改変する前には、どんな生物がどれほどいただろう」―わずかに残された天然の森林や湿原に、数多くの生物が生息しているようすを見かけるたび、私はこの疑問を抱かずにはいられませんでした。しかし、生物の種数・個体数の変化を観測したデータは世界的に長くても50年程度しかなく、また北半球の多くの地域では、森林や湿原の農地への転換が数百年以上前に生じたため、この問いに答えるのは世界的に困難な状況です。

 

過去の生物多様性変化を数量的に明らかにできれば、「生物多様性喪失の深刻さ」をわかりやすく伝えることがでしょう。さらに、減少要因の特定や定量的な保全目標の設定が可能になるため、保全政策立案上の重要な礎となる情報を提供できるでしょう。

北海道の石狩平野は、温帯・亜寒帯地域では稀有な、1860年代頃まで平野部に湿原や森林が残っていた地域です。そして、石狩平野では1850年以降の土地利用図が残されています。私はこの石狩平野に着目して、鳥類の個体数を数える野外調査を実施した。そして、調査で得られた鳥類の個体数を統計的に処理し、過去の土地利用図にあてはめることで、石狩平野の鳥類多様性の長期変化を定量化しました。


石狩平野では、1880 年から 1900 年にかけてほとんどの湿原や森林が農地に置き換わりました。
石狩平野に生息する鳥類の個体数は、1850 年には約 210 万個体、2016 年には約 60 万個体と推定されました。すなわち、森林や湿原の農地への転換によって、鳥類の個体数は70%以上も減少しました。現在は、この研究手法を発展させ、日本全国の過去170年間の生物多様性変化を定量化する研究を計画しています。

​ ・ちょっとだけ:太陽光発電所における鳥類調査  2016年~

         (Do solar power plant developments have negative effect on birds?)   

​耕作放棄地は太陽光発電所の導入先としても期待され、法整備も進んできています。私は、生物多様性保全と再生可能エネルギー導入の両立にも興味があり、これまでに道内4箇所の太陽光発電所で、発電事業者さんと協力しながら鳥類調査を実施してきました。

​北海道道央地域のメガソーラー発電所

この場所はかつては耕作放棄地でした。

(この写真の発電所では調査を実施していません)

​北海道道央地域のメガソーラー発電所

太陽光発電所にはいくらかの鳥類が生息しているようですが、

​調査地点数が足りず、その評価がまだできない状態です。

​ ・絶滅危惧種アカモズの個体数調査と生息地選択の解明  (Conservation of Brown Shrike)  2014年~ 

過去20年間で、国内で最も分布域が狭まった鳥類の一種としてアカモズが知られています。私が通っていた北海道大学にも50年以上前まではアカモズが繁殖していたようですが、現在では全く観察されていません。危機的な状況が国内各所で報告されているにもかかわらず、国内に何羽のアカモズが残っているのか、どのような場所に分布しているかについて、直近の状況が全く把握されていない状態です。

 

日本全国を対象として、これまでにアカモズが記録されていた場所で個体数調査を実施し、現況の把握に努めてきました。この研究成果に基づいて、アカモズは種の保存法が定める国内希少野生動植物種に指定され、現在では一般社団法人 野生生物生息域外保全センターと一緒に生息域外保全実施の必要性を検討しています。また北海道内の自治体が進めている生息域内保全事業にも専門家として助言を行っています。

​アカモズのオス

​アカモズのオス

bottom of page